2024年11月2・3日の2日間に渡り、武蔵野の森総合スポーツプラザにて、カプコンプロツアーのオフライン大会「CAPCOM Pro Tour 2024 SUPER PREMIER JAPAN(CPTスーパープレミア)」が開催されました。開催した武蔵野の森総合スポーツプラザは京王線飛田給駅の近隣にあり、隣には味の素スタジアムがあることでお馴染みの場所です。
本大会で優勝・準優勝の成績を残した選手はCAPCOM CUP 11(CC11)への出場権を獲得できる数少ない公式大会となっています。特に2名が出場権を取得できるオフライン大会はスーパープレミアと銘打たれており、ほかの大会よりも格上の大会となっています。
日本国内での開催で大会名にJAPANがついていますが、海外からの参加も認められており、15歳以上であれば誰でも参加ができます。ざっと見かけた感じで、EndingWalker選手、AngryBird選手、NL選手、OILKING選手、Xiaohai選手、PloblemX選手、Zhen選手、Humanbomb選手、DCQ選手、Mister Crimson選手、Nephew選手が確認できました。ほかにもまだまだ居たようです。EVO Japanでも多くの海外勢が来日していましたが、それでも見かける機会は少ないので、彼らと会い行くだけでも参加もしくは観戦する価値は十分にあると思います。
参加者は1248名で、その頂点に立ったのはREJECTのときど選手。準優勝は韓国のLeShar選手となりました。ときど選手はグランドファイナルでも勝利し、ダブルイリミネーションながら一度も負けることなく完全優勝を果たしています。これで、CC11への出場権を獲得した日本人選手は板橋ザンギエフ選手、Shuto選手、ときど選手の3名で、これから出場枠が確定するCPT World Warriorの結果により、さらに2名追加され、全5名の出場となりました。
ときど選手・LeShar選手 コメント
大会後にときど選手の優勝コメントとLeShar選手のCC出場についてのコメントをいただきました。
「今回は本当に自信がなかったんですよね。それがかえって変な緊張をせずにすみましたし、やるしかないという気持ちでやれたのかと思います。今回のプレミアは5年ぶりのオフライン大会ということで久々ですね。EVO Japanとかあったのでオフライン大会自体が久々ということはないんですけど、プレミアって『ストリートファイター』のみの祭典なので、そこはちょっと違うかなって感じですね。僕自身はプレミア大会とは相性が良い方で、2018年のジャパンプレミアでも優勝させていただきました。準優勝したLeShar選手とは本当に毎日、顔を合わせて練習しているので、こういう良い結果が得られたと思います。毎日練習ができる環境を提供していただいているREJECTには感謝しています。この環境でやっていければ国技館でも良い成績が残せるんじゃないかと思っています。今年のCCは日本で開催ということもあって、日本のファンはかなり注目してくれていると思います。そういった特別な大会に参加できる資格を得る大会で優勝できたのは嬉しいですよね。決勝の方も万全の体調で臨めると思いますし。やはり海外は時差がキツいですからね。この前、優勝した海外の大会はオーストラリアで時差がほとんどありませんでしたから。今回は他の国の人には申し訳ないですが、ホームの利を生かしてやらせていただきます」(ときど選手)
ときど選手
「ときど選手と一緒に練習してアドバイスをくれるから今年が一番良い成績が残せると思います。過去一番なだけでなく、きっとこれからの未来でも今が一番良いと思います。ときど選手は一番強い選手ですから。(ときど選手に、本当はGO1選手が1番だと思っていますと言われ)、GO1さんは他のゲームの一番ですね。立川さんもそのタイトルで一番好き。ときど選手が『ストリートファイター』では一番です。CCに出場できることになったので、がんばります」(LeShar選手)
盛り上がる会場内の様子をレポート
CPTスーパープレミアは、CPTの公式大会としてだけでなく、様々なイベントや展示があり、『スト6』の祭典と言った感じです。かげっち氏が主催する対戦会Fighters Crossoverも同時に開催。出場者だけでなく、観戦に訪れた人たちも参加することができました。いつものランク別の対戦台に加え、サイドトーナメントも開催され、本大会と同じくらいの盛り上がりを見せています。
いくつかの企業もブースを展開。トップスポンサーである京王電鉄や『スト6』のアパレルやグッズを豊富に販売しているGRAPHT、大会で使用されているモニターを提供しているIOデータのGigaCrysta、CELLORBが運営するアパレルブランド+1Fなどが出展していました。
観戦勢のために応援ボードの作成コーナーや応援メッセージを書いた付箋を貼れるコーナーなども用意し、ファンがより楽しめるようになっていたのは、最近のeスポーツ観戦のトレンドと言えます。
JCGの猿渡氏・Fighters Crossoverの影澤氏へ独自インタビュー
CPTスーパープレミアの総合プロデューサーを務めたのは、JCGの猿渡氏。さらにアドバイザーとしてFighters Crossoverのかげっちこと影澤氏が携わっています。猿渡氏はアーケードゲーム専門誌であるゲーメストの編集者であり、ゲームイベント「ゲーメスト杯」に関わった人物。後にアーケードゲーム専門誌「アルカディア」の編集長となり、アーケードの対戦格闘ゲームの大会である「闘劇」を立ち上げています。影澤氏は『ストIII』時代からイベントを始め、今や全国に広がる『スト6』の対戦会である「Fighters Crossover」を立ち上げるなど、長年オフライン対戦会を見守ってきました。どちらもオフラインにおいて対戦格闘ゲームのイベントの勇と言える存在です。そこで今回はCPTスーパープレミアについてお二人に話を聞いてきました。
――猿渡さんは数々のオフラインゲーム大会を開催してきましたが、闘劇以来の大がかりなイベント運営となると思います。CPTスーパープレミアを担当する経緯はどんな感じだったのでしょうか
猿渡雅史氏(以下猿渡):CPT自体は数年前からあり、オフライン大会も開催していました。コロナ禍もあり、しばらくオンラインで開催していたところ、久々のオフライン大会ということもあり、各社開催に名乗りをあげました。JCGもチャレンジしていこうという話になり、最終的にカプコンと意見が一致し、開催することになりました。開催が決まった時点では誰が仕切るのかというのは決まっていませんでしたね。対戦格闘ゲームで大規模なオフライン大会となると経験者も少なく、私に白羽の矢が立ったという感じです。
影澤潤一氏(以下影澤):おそらくFighters Crossoverの全国大会が終わった今年の春くらいに、CPTスーパープレミアの話が出てきました。カプコンさんが5年ぶりに、オフラインでプレミア大会を開きたいと。前回は2019年の東京ゲームショウでの開催でしたが、今回は単独での開催をしたいという話でした。たしかにコロナ禍でのオンライン大会だけという状況はストレスを感じていましたし、みんなが集まれない寂しさもありました。それは是非とも関わりたいと素直に思いました。『SFV』でのFighters Crossoverはコロナ禍になって再開できないまま終わってしまいましたが、『スト6』がリリースされたタイミングで再開したら、やっぱり面白くて、オフは良いなと。
――影澤さんは『ストリートファイターV』からFightersCrossoverを始めて現在進行形で続けていますが、猿渡さんは闘劇以来の大型ゲームイベントとなります。当時と変わった点や変わってない点などはありますか
猿渡:闘劇の時代は参加者みんなで奮起して作り上げてくれた感じですね。力を合わせてやっていました。当時はアーケードゲームでしたが、今回はコンシューマゲームとプラットフォームも変わっています。
コロナ禍があったのと、オンライン環境が整ったことで、人と人が向き合ってゲームをする機会も少なくなりました。なので、今回の大会でオフラインイベントに初参加の人は、(知らない)人と向き合って対戦することが初めての体験になるかも知れません。そういった人を優しく迎え入れていきたいと思っています。
大会を運営するうえでのマインドは昔と変わっていませんね。対戦相手がすぐ隣にいて戦う緊張感。大勢の人が集まって同じゲームをプレイするお祭り感や高揚感。こういったものは昔と変わらないでしょう。初めての人は大会にエントリーするところから緊張するかと思いますけど、対戦相手も同じゲームが好きな同志ですしね。対戦し終わったあとに「対戦ありがとうございました」と握手するのはオフラインならではですし、大会以外に野試合コーナーがあって、大会から敗退した人が一緒に対戦して、会話して、仲良くなる。プロとアマチュアも関係なく一緒にやるというのも良い機会だと思います。
影澤:闘劇の時代は大会で使われるタイトルが好きなコアな人たちが集まっていて、良くも悪くもその人たちのためだけの大会でした。この何年かで、ライト層や始めたばかりの人、配信などで興味を持った人など、そこまでコアな人ではない人が来るようになって、参加者の層が変わったと言えます。なので、まだ大会に参加したことがないような人たちにも参加できるハードルは下がっているので、是非参加してみてオフラインの楽しさを知ってほしいですね。きっと体験することで見えてくることは多いと思います。
猿渡:対戦格闘ゲームは90年代から関わっていますが、00年代も10年代も20年代もすべての年代でプリミティブな部分は変わっていないと感じています。対戦格闘ゲームは、ゲーム的に大会として完成されていて、大会自体の形式や佇まいはその頃から変わっていない。だから、熱狂できる部分も変わらないですし、一喜一憂する部分もかわらないんです。そこは本当にスポーツ的だと言えますね。
影澤:オンラインになって、大会への参加ハードルはすごく下がったと思いますが、大会の熱量ってなかなか伝わらないんですよね。こうやってオフライン大会を開催して実際にその熱量を体感してもらうのが一番だと思います。
――今回のイベントについての感想はいかがでしょうか
猿渡:反省すべき点は多くて大変ですけど、次の世代にオフライン大会の魂を受け継いでもらえたらと思っています。運営、参加者すべての人が次に繋がる何かを感じて貰えれば良いですね。それこそ、ゲームの向き合い方が変わったというような感じでも良いです。何かしら影響を受けてくれて、次に繋がってほしいです。
影澤:次に繋がる、という意味で、今回のCPTスーパープレミアジャパンは15歳未満の参加はできないんですが、せっかくなら若い世代にもこの会場に来てもらいたくてサイドイベントの対戦会やアンダー15トーナメントを企画しました。全国のFighters Crossoverにも若い子の参加が増えているので。
結果、アンダー15トーナメントで、川崎のすごい強い子が優勝していたんです。25年前に自分も手伝った大会で、ときど選手とMOV選手が3on3を2人で出て、準優勝したときのことを思い出して、だいぶエモかったし、こうやって明日に繋がる何かが発生しているんだとなと強く感じました。
猿渡:大会をやって優勝者を生むことは喜ばしいことではありますけど、同時に重い十字架を背負わせてしまう側面もあります。その十字架にどれだけの価値があるかで、背負う意味が出てくるので、大会を継続し、優勝することの重みを、価値を示していかなければならないと思っています。
最後にeスポーツカメラマンである志田彩香さんによるポートレートを掲載します。現場の雰囲気がよくわかるので、写真を見て行ってみたいと思った人は、次のオフライン大会や対戦会に参加してみてください。
eスポーツを精力的に取材するフリーライター。イベント取材を始め、法律問題、eスポーツマーケットなど、様々な切り口でeスポーツを取り上げる。ゲーム情報誌編集部を経て、フリーランスに。様々なゲーム誌に寄稿しながら、攻略本の執筆も行い、関わった書籍数は50冊以上。現在は、Webや雑誌、Mookなどで活動中。近著に『みんなが知りたかった最新eスポーツの教科書』(秀和システム刊)、『ゲーム業界のしくみと仕事がこれ1冊でしっかりわかる教科書』(技術評論社刊)。@digiyas