
2025年6月28・29日に、東京体育館にて、ストリーマーSHAKAさんが主催する『ストリートファイター6(スト6)』のイベント「Red Bull LEGENDUS STREET FIGHTER 6 頂(頂)」が開催されました。
会場はJR千駄ヶ谷駅から信号を渡ってすぐの好立地です。普段は屋内スポーツイベントを中心に使用されているだけあって、常設スタンド席も座りやすく、観やすい設計になっています。会場回りにはキッチンカーも展開され、オフィシャルグッズの販売テントもありました。




頂はオープントーナメントと招待制が融合したイベントで、Day1はプロゲーマーを除くストリーマー、一般プレイヤーが自由に参加できるダブルエリミネーション方式のオープントーナメントを行い、Day2に出場する16名を決めます。
頂の特別ルールとして、Day2に出場できるのはキャラクター毎にひとりのみなので、ベスト16に入ったとしても、同じキャラクターで他に上位選手がいれば、出場をすることができません。被りが発生した分、ベスト16トーナメントに空きができるので、その空いた枠を巡って、ベスト16に入れなかったキャラクターの1位の選手が、出場枠をかけてトーナメントで対戦します。例えば、ケン使いの人が5位になったとしても、3位にケンがいれば5位のケンは出場できません。ベスト16の4枠が被りキャラクターになっていた場合は、Day2出場確定していないキャラクターの1位の選手でトーナメントを行い、ベスト4の選手がDay2の出場権を獲得します。

Day1の模様をプレイバック
Day1のオープントーナメントの結果は、9位のレオン つまじろさん(キャミィ)、ランガサミさん(E.本田)、オスギ(キャミィ)、うに(ザンギエフ)の4選手がベスト16に入りながらもキャラクター1位を取れず参加権を得られませんでした。まだ、参加権を得ていない13キャラクターの1位によるトーナメントの結果、もっちゃん(A.K.I)、Meg5(ジュリ)、ぽてぽてキリン(ラシード)、みつエマ(ED)の4人がDay2への進出を決めています。
招待されたストリーマーは舞までのキャラクター25体にそれぞれ担当が決まっており、Day1で勝ち抜いた同じキャラクターを使う選手とコンビを組み、トーナメントを戦います。ベスト16に入れなかったキャラクターを担当するストリーマーは試合に出ることもなく敗退となります。 今回は、リュウ、ケン、豪鬼、リリー、ルーク、舞、ディージェイ、マリーザ、ジェイミーがベスト16に入れなかったので、けんきさん(リュウ)、おにやさん(ケン)、らいじんさん(豪鬼)、倉持由香さん(リリー)、よしなまさん(ルーク)、Zerostさん(舞)、DJ SHIGEさん(ディージェイ)、まざー3さん(マリーザ)、sasatikkさん(ジェイミー)は、1度も対戦することなく、ゼロ回戦敗退となりました。


Day1で優勝したのは、あくたがわさん。MR世界一となったマノン使いとして名を馳せ、公式大会でもファイナリストに肉薄することもあり、ほぼプロと言える選手です。一度はtakoさんに負けてルーザーズに落ちますが、そこから勝ち上がり、ルーザーズファイナルでは、そのtakoさんに勝利。グランドファイナルではyukariさんに連勝し、見事リセットを成し遂げました。
Day2はDay1で勝ち上がった一般プレイヤーと招待枠のストリーマーのチーム戦で争われます。1戦めに一般プレイヤー同士のBO3(2本先取)で行われ、次にストリーマー同士のBO3が行われます。ここで連勝すれば決着ですが、1勝1敗となった場合は、一般プレイヤー同士のBO1(1本先取)が行われ、決着となります。同じLEGENDUSの師弟杯ではストリーマーが2試合行っていたので、勝敗のカギを握るのはストリーマーでしたが、今回は一般プレイヤーが勝敗のカギを大きく握ると言えます。Day2もダブルエリミネーション方式で行われますが、敗者となったチームは黒服サングラスのSPの風貌をしたマジット氏によって、ルーザーズ部屋に送られます。ルーザーズ部屋ではルーザーズサイドの試合が行われますが、隔離された部屋なので、来場した観客も観られない状態。大盛り上がりのウイナーズサイドの試合に比べ、かなり寂しい状態でのプレイとなります。一応、配信はされますが、ルーザーズ専用のチャンネルとなり、メイン配信とは別配信となります。ルーザーズセミファイナルまで勝ち上がれば、メインステージに帰ってこられるのですが、多くのチームは人知れず負けて、消えていくことになります。



優勝したのは、チームマノン。あくたがわさんが全勝の快挙で優勝を決めました。ただ、SHAKAさんもあくたがわさんにキャリーしてもらったわけではなく、3勝2敗と勝ち越しており、しっかり優勝に貢献していました。


主催・SHAKAさんへインタビュー
Day1の最後にSHAKAさんに話が聞けました。
――LEGENDUSは出演者のみならず『スト6』のキャラクターにスポットが当たっている作りになっていますが、それは意識されているのでしょうか
SHAKAさん:私は格ゲー歴がそれほど長くないですが、格ゲーを観るようになって1番最初に感じたのは、自分が使うキャラクターへの政治活動が面白いなって思ったんです。(アップデートで調整されないように)自分が使っているキャラクターは弱いと言ったり、そういう冗談めかしたやりとりがあって、そういうのを含めてプロの試合って面白いと思っていました。そのせいか、いろんな人の思いを出すために、会議で、いろんなキャラクターが出られる大会になる案を出してしまうのかもしれません。
――SHAKAさんはFPS出身の元プロプレイヤーですが、他ジャンル出身者として、格ゲーの魅力はどこにあるのでしょうか
SHAKAさん:やはり一番はわかりやすさですね。たくさん殴った方が勝っているとか。ドライブインパクトって喰らってしまうと大きな痛手となる技があるんですけど、発動すると派手派手な演出になるんです。それが見えたら喰らえないってなるし、それをインパクトで返したりすると、一瞬、時が止まったような演出になって、なんかすごいことになってるぞというのがわかりやすいんです。初めて観たとしても“盛り上がるポイントはここ”というのがわかるんです。そんな感じで楽しんで観られるんですけど、プレイしたり、いろんな試合を観ていると、自然と知識が頭に入ってきて、より面白さがわかってくるんです。知識が入るたびに、面白さが更新していくというか。そういところが魅力だと思っています。
――LEGENDUSはすでにいろいろな形で行われてきましたが、LEGENDUSを開催することで、どんな影響があると思われますか
SHAKAさん:前回、後楽園ホールで開催した師弟杯では、観てもらって熱狂して楽しんで貰うというのがあったんですけど、今回は観て楽しむ人たちに加えて、プレイヤーにも参加して楽しんで貰いたいというのがありました。EVO JapanとかCPTとか誰でも参加できる大会はあるんですけど、多くの人は『スト6』から初めて、そういった歴史ある大会には参加しにくい部分もあると思います。今回はプロ選手が参加できないルールになっていて、そういった歴の浅い人たちでも参加しやすくなったのかなと思っています。大会の楽しさを知ってほしいんですよね。

LEGENDUS 頂を振り返って
今回のLEGENDUS頂は何と言っても誰でも参加ができるオープントーナメントをSHAKAさんが開催できたことではないでしょうか。公式大会やEVO Japanなど、歴史ある大会以外ではオープントーナメントはほとんどみられません。これは、オフラインイベントとして開催する場合、どうしても出場者の知名度によって、配信の視聴者や来場者の数が見込みないため、興業として成り立たせにくいと言う側面があります。例えそれがSHAKAさんのような有名ストリーマーが開催したとしても変わらないでしょう。なので、一般参加のオープントーナメントを開催する場合、オンラインで開催するか、オフラインでも小規模開催にするかのどちらかになるわけです。
そこにストリーマーと一般参加者を組ませることで、関心度を高めています。さらに、オープントーナメントから勝ち抜いてDay2に進出するのは、各キャラクターの1位のみで、上から16名までとなっています。これにより、推しのストリーマーが試合に出られるかどうかがDay1の結果にかかっているので、ストリーマーのファンたちも必然的にDay1への興味も高まります。今回はDay1で優勝したあくたがわさんが強かったので、事なきを得ましたが、場合によっては主催者のSHAKAさんがDay2に出場することができなかった可能性もあるわけです。
今回は一般部門がプロライセンス保持者の参加がNGとなっていたので、一般部門とストリーマーの組み合わせがどんな形になるのかもわからず、ほぼ初見でのコンビとなったり、対戦となったりしたのも、Day1の順位やストリーマーの実力、キャラクター相性などではチームの強さが計り知れず、下馬評すら立たない状態は観ていてわくわく感のある大会だったと言えます。
LEGENDUS自体は師弟杯や最強道場決定戦など、趣向の違う企画を行っていますが、どれも基本は多くのキャラクターに脚光を浴びせる作りになっています。それぞれに繋がりが無さそうですが、今回も会場の2階広間部分にそれぞれの道場のブースを用意し、道場主による指導対戦や解説などが行われていました。また、会場はキャラクターごとに観客席を分けていました。eスポーツイベントでは、フィジカルスポーツのようなチーム推しの観点が弱く、いわゆるホーム側、アウェイ側といった応援席の区分もありませんが、今回はキャラクターごとではありますが、特定のチームを応援できる環境もできていました。



LEGENDUSはひとつひとつはまったく違い内容ですが、根幹の部分で繋がっており、LEGENDUSである意味が見えてきました。
来年には師弟杯を開催すると最後にSHAKAさんから発表がありました。プロゲーマーもストリーマーもキャラクター換えがある可能性もあり、師弟関係が崩れることも、新たに構築されることもあります。どういった師弟杯を見せてくれるか楽しみです。
(c)CAPCOM

eスポーツを精力的に取材するフリーライター。イベント取材を始め、法律問題、eスポーツマーケットなど、様々な切り口でeスポーツを取り上げる。ゲーム情報誌編集部を経て、フリーランスに。様々なゲーム誌に寄稿しながら、攻略本の執筆も行い、関わった書籍数は50冊以上。現在は、Webや雑誌、Mookなどで活動中。近著に『みんなが知りたかった最新eスポーツの教科書』(秀和システム刊)、『ゲーム業界のしくみと仕事がこれ1冊でしっかりわかる教科書』(技術評論社刊)。@digiyas