『ストリートファイター6(スト6)』の公式リーグ戦ストリートファイターリーグ:Pro-JP 2024(SFL)が8月16日に開幕しました。今回はSFLの成り立ちと歴史を振り返りつつ、開幕戦の様子をお届けします。
SFLは2018年より開始した公式リーグで、2018年のプロ選手、ハイアマチュア、ビギナーの3クラスがチームを組む形式から始まります。2019年にはトライアウトとドラフトによりチーム編成され、相手チームの使用キャラを1キャラ使用不能にするBANルールを採用。2020年もBANシステムを採用したうえで1チーム4人体制を採用となりました。2021年から現在のSFLの形となります。2020年まではリーダーとなる選手名を冠とし、毎年チーム編成が変わるチーム体制でしたが、2021年からはeスポーツチームが母体となり、所属選手+派遣選手の組み合わせでの出場となりました。また、ホーム&アウェイ方式もこの年より採用され、BANシステムが排除されます。アウェイ側が3人分のオーダーを先に提出し、ホーム側がそれに対して、対戦前にひとりずつオーダーを発表します。先鋒と中堅は勝利すると10ポイント、大将戦は20ポイント獲得ができ、同点となった場合は、延長戦に突入し、勝利したチームに5ポイントが入ります。出場チームはv6プラス FAV Rohto Z!、Good 8 Squad、Saishunkan Sol 熊本、コミュファDetonatioN、忍ism Gaming、Mildom Beast、魚群、名古屋OJA BODY STARの8チーム。2022年は基本的に前年度と同じレギュレーションですが、Mildom Beastが不参加となり、新たに広島TEAM iXAが加入します。2023年はCYCLOPS athlete gaming OSAKAが加入し、9チーム体制に。2シーズン制となり、1stシーズンの上位6チームのみが2ndシーズンに進出できる形になりました。2022年でチームとして参加をしていないウメハラ選手でしたが、2023年には選手としての出場も見送っていたのが象徴的なできごとでした。
そして2024年シーズンです。今年はチーム数が一気に拡大FUKUSHIMA IBUSHIGINとCrazy Raccoon、Yogibo REJECTの3チームが新たに加わり、12チーム体制となります。これによりDivision SとDivision FのふたつのDivisionに分け、それぞれのDivisionごとのリーグ戦に。他のスポーツに例えるのであれば、プロ野球のセ・リーグとパ・リーグのような形になったわけです。それぞれのDivisionの上位チームがプレイオフに進出し、プレイオフで優勝したチーム同士で日本一を争います。これもプロ野球のクライマックスシリーズと日本シリーズを思い浮かべて貰えればわかりやすいと思います。
ちなみにDivision分けは以下の通りです。チームのロースターに関してはこの記事を参照してください。
Division S
Division F
対戦の基本ルールは昨年とほぼ変わらず、ホーム&アウェイ方式です。お互いの対戦をホームとアウェイで行い、全10試合を行います。
8月16日に行われたのはDivision Sの開幕戦。対戦カードは、DFM(アウェイ)対NTP(ホーム)、SNB(アウェイ)対G8S(ホーム)、SS熊本(アウェイ)対IBSG(ホーム)の3試合です。
いずれの試合もホーム側の先鋒・中堅が敗北する波乱の展開、NTPとIBSGは大将戦を取り返しますが、延長戦ではアウェイ側が勝利。SNBは大将も敗北し、ホーム側で得点が得られないと言う厳しい展開になってしまいました。開幕戦ということもあり、どの選手も硬さがあったように思えますが、すべてアウェイ側が勝利したという結果は、今後の展開も荒れそうな気配がします。
DFM対NTPは、先鋒が豪鬼ミラー、中堅がケンミラーと同キャラ対決。豪鬼、ケン、ED、ベガは使用しているプレイヤーが多く、同キャラは起こりうる事態ではありますが、あえてホーム側が合わせに行き、そのうえで敗北してしまうのは、今後に向けてどうみるか、行く末が気になります。
SNB対G8Sは、現状でNo.1ED使いとみられるももち選手が登場。初戦からポイントを取りにきた感がありましたが、ED戦は有利だと言うYHC-餅選手に返り討ち。藤村選手、ジョニィ選手も立て続けに負けてしまいました。G8Sとしては昨年の1stシーズン脱落の直接の相手であるSNBにリベンジする形となり、幸先の良いスタートダッシュとなりました。
3matchは、SS熊本対IBSG。昨年はお互いのチームが提携しており、1stシーズンはササモ選手が、2ndシーズンはcosa選手がSS熊本の助っ人として参戦していました。SS熊本はIBSGに加え、Shuto選手がCRに移籍したため、メンバーの空きができたところに、格ゲーの王が降臨。同じ所属チームのふ~ど選手とともに、ウメハラ選手が参戦してきました。そして、しっかりと初戦を勝ちきり、それも瞬獄殺で決めるところは、生ける伝説の名の通りの見事さがありました。プロパーのメンバーも4大会連続優勝を成し遂げたひぐち選手とEVOで5位タイの好記録を残したネモ選手が好調をキープしており、優勝候補として名が上がっています。大将戦のオーダー発表では翔選手の「大将、俺!」が飛び出し、往年の野球ファンであればヤクルトスワローズでプレイングマネージャーを務めた古田選手を彷彿させたのではないでしょうか。先のCAPCOM ProTour World Worrierで優勝するなど、今年も絶好調の翔選手がふ~ど選手を下し、20-20の同点に。そこですかさず延長戦でふ~ど選手が翔選手にリベンジを果たすのはさすがのひと言でした。
Division Sの開幕戦の4日後となる8月20日にDivision Fの開幕戦が行われました。対戦カードはRC(アウェイ)対iXA(ホーム)、CAG(アウェイ)対VR(ホーム)、CR(アウェイ)対FAV(ホーム)の3試合です。
Division FはDivision Sと打って変わって、先鋒・中堅がお互いポイントを取り合う展開。大将戦で勝敗が決まる構図となりました。したがってすべて30:10の結果になりましたが、今回もアウェイが2勝、ホームが1勝という結果に。相手チームの選手やキャラクターを確認したうえで、それに相性の良い相手を当てられるホーム側が絶対的な優位と言えるルールですが、2日間を通して、ホーム側が勝ったのは1勝だけと言う結果となりました。アウェイ側も不利なキャラクターをかぶせられることは十分に承知であり、開幕戦ということで、十分対策の時間がとれた結果とも言えます。今後、試合間隔が短くなるうえで、どこまで対応できるのか、また、アウェイ側の予測を覆すホーム側のオーダーがみられるようになるのかが注目でしょう。
RC対iXAの注目は中堅戦。今回の両Divisionの第1節において、唯一と言って良いほどのホーム側の被せがうまくいった試合と言えます。鶏めしダルシムに対して、iXAが出した解答はACQUAブランカ。きっちり相性の良さを押しつけ、ACQUAブランカが勝利しました。また、大将戦はLeShar選手が2セット連取してからのひかる選手の3セット連取での逆転劇も好試合でした。細部まで知り尽くしたひかる選手のA.K.Iが窮地から脱すると、一気に相手を倒しきりました。
CAG対VRはなんと言っても大将戦です。GO1選手の春麗と相性が良い、ガイルを擁するだいこく選手が被せにきます。試合の大半はガイルが制しており、勝ち星も先行します。しかし、少ないチャンスをものにするGO1選手。特に隙の少ない飛び道具であるガイルのソニックブームに、春麗のSAで弾抜けする技術は驚愕のひと言。次第にGO1春麗のSAゲージが2つ溜まるとガイルがソニックブームを打ちにくくなり、攻め手が乏しくなる場面も出てきました。だいこく選手の動きも悪くはありませんでしたが、それを上回った人間性能の高さでGO1選手が勝利を収めました。
第1節最後の試合となったのが、CR対FAV。FAVは昨年のチャンピオンチームですが、その主要メンバーであったボンちゃん選手は、対戦相手のCRに移籍しています。
先鋒戦は起き攻めが重ねきれずにその隙を反撃される展開がみられ、りゅうせい選手のベガの火力に大ダメージを食らってしまいます。昨年のチームの勝ち頭であったボンちゃん選手を倒せたのは大金星と言えます。中堅・大将戦は、同じキャラクターの組み合わせながら、中堅と大将でキャラクターが入れ替わります。中堅戦ではりゅうきちのキャミィの上からの攻撃を対空技でガンガン落とす豪鬼が勝利します。大将戦ではts選手の豪鬼が一気呵成の攻めでかずのこキャミィを追い詰めますが、渾身のコンボで倒しきれず、ほんのわずかな体力が残ります。そこから倒しきれず、逆転負けを喫してしまいます。そこからかずのこ選手が怒濤の攻めをみせますがts選手は対応できず。中堅と大将で同じ組み合わせながら、真逆の結果となりました。
第1節を観た感想としては、現時点では突出したチームがいないと言う印象でした。ホーム&アウェイの結果からみても、安定して被せられる組み合わせもないように思えます。その日の選手の調子、その時点での対戦組み合わせのトレンドなど、試合直前までオーダー会議をしなくてはならないレベルで、刻一刻と変わっていく状況に対応していかなければならないように思えました。
このまま混沌としたまま行くのか、次節で一気に飛び出すチームが出てくるのか、それも予想が付かない状態です。とにかく次節も楽しみであることだけは間違いありません。
©CAPCOM
eスポーツを精力的に取材するフリーライター。イベント取材を始め、法律問題、eスポーツマーケットなど、様々な切り口でeスポーツを取り上げる。ゲーム情報誌編集部を経て、フリーランスに。様々なゲーム誌に寄稿しながら、攻略本の執筆も行い、関わった書籍数は50冊以上。現在は、Webや雑誌、Mookなどで活動中。近著に『みんなが知りたかった最新eスポーツの教科書』(秀和システム刊)、『ゲーム業界のしくみと仕事がこれ1冊でしっかりわかる教科書』(技術評論社刊)。@digiyas