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【インタビュー】シューティング系eスポーツで初の世界一となったREJECTの凱旋インタビュー

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4月5~7日にブラジルにて開催された『PUBG MOBILE』の公式大会「PUBG MOBILE GLOBAL OPEN 2024(PMGO2024)」にて、日本のeスポーツチームであるREJECTが優勝し世界一の栄冠に輝きました。シューティングゲームの公式大会において、日本チームが優勝したのは初であり、まさに快挙と言えます。

PMGO2024で優勝したREJECT(写真提供:REJECT)

PMGOは3日間で全18試合を行い、順位ポイントとエリミネートポイント(敵を倒した数による得点)の合計点で争われます。4人ひと組のチームで、世界各国の予選を勝ち抜いた9チームと招待された7チームの計16チームが参加しています。

REJECTは日本から参加した唯一のチームで、国内リーグでは屈指の実力チームで、世界大会は数多く経験しています。長年の世界大会の挑戦が今回のPMGOによって実ったわけです。そこで、日本に凱旋したREJECTのメンバー4人(Devine選手、Duelo選手、SaRa選手、ReijiOcO選手)とコーチ(MimoriN氏)にインタビューを敢行してきました。

――PMGO2024の優勝おめでとうございます! 早速ですが優勝の感想をお聞かせください

Devine選手:世界一を目指して活動をしていたので、素直に目標が達成できたことはすごく嬉しく感じています。僕個人としては、一度、REJECTを抜けてから、他のチームで活動したのち、このチームに戻ってきたという立場でした。戻ってから初めての世界大会でこういう結果が出せたのは、本当に嬉しく思っています。

Duelo選手:僕自身は『PUBG MOBILE』を始めて4~5年になるんですけれども、最初は世界一になるとかそういう目標ではなく、なんとなく流れでやっていく感じでした。それが、次第に世界を取りたいという目標が芽生えてきました。これまでに何度か世界大会に出場する機会があったんですけど、全然結果に結びつかず、悔しい結果が続いた中、世界一という目標にようやく手が届いたので、とても嬉しかったです。

ReijiOcO選手:4年間の間に何度か世界大会に出場したんですけど、全然うまくいかず、順位は下ばかりでした。Devine選手が戻ってきて、この4人での練習時間はあまりとれずに出場したんですけど、それで優勝できたのは嬉しかったです。

SaRa選手:世界大会には10回くらい出ているんですけど、本当にずっと夢にみていた世界一を叶えられたのは嬉しかったです。個人的には、僕が一度チームから離れてしまった期間があって、戻ってきた時にはメンバーも替わってしまっていたんですけれど、今また当時のメンバーと一緒になって、そのメンバーで優勝できたのは、僕の中では本当に意味のあることで嬉しかった。

インタビューはDiscordで行われました

――Devine選手は一度チームを離れて他のチームで活動していましたが、その経験は今のチームに良い影響があったのでしょうか

Devine選手:2~3年REJECTに居たんですが、その間、新しいメンバーが入ってくることはあったんですけど、自分が出て行くという経験はそれが初めてでした。自分自身も新しいチームに溶け込むということに慣れておらず、移籍先のメンバーも自分もやりづらい部分があって、慣れるまで時間がかかってしまいました。REJECTのメンバーほど仲の良い選手も居ませんでした。やはりチームワークってすごく大事で、良い関係が築けていないと、雰囲気が悪くなった時にそのままチームが崩れてしまうこともあるんです。信頼関係が築けていない状態でチームプレイをするというのはすごく難しかったですね。REJECTに戻ってきて、関係はできているというか、仲の良いメンバーなので、前のチームのような感じにはならなかったですね。

――他のメンバーもDevine選手が戻ってきたことに対して問題なくチームワークが組めたのでしょうか

SaRa選手:言うほどすんなりには行かなかった部分もありました。ReijiOcO選手が入ってくるまで、僕がIGL(インゲームリーダー、チーム内の司令塔役)をやっていたのですが、彼が入ってからはIGLは彼がやるようになりました。難しかった部分もありましたし、面白いというか、また違って良い部分もあるなという感じでしたね。

――PMGO2024はブラジルで開催されましたが、日本の真裏で時差もあり、移動距離もかなりのものでしたが、体調的にはどうでしたでしょうか。また、食事などの苦労はありましたでしょうか

MimoriNコーチ:行きは飛行機の中でぐっすり眠れたこともあって、到着した時は良いコンディションでした。ただ、Duelo選手が風邪を引いてしまって、そこからひとりずつうつってしまい、体調が万全ではなくなってしまいました。これも世界大会では良くあることで、今回もって感じでしたね。

Duelo選手:大会初日はめちゃくちゃしんどくて、ボイスチャットも何を言っているかわからなかったくらいです。仕方ないので、目の前にあるやることだけをやることにしていました。

Devine選手:僕も風邪をひいたんですけど、そこまで辛くはなかったですね。もちろん、いつも通りというわけではなかったですけど。

――食事はどうでしたか

ReijiOcO選手:食事に関しては美味しかったですね。味付けがすごくシンプルで良かったです。

MimoriNコーチ:結構ヘルシーな感じでしたね。

SaRa選手:食事自体の得手不得手はなかったんですけど、空腹にはちょっと悩まされました。試合のある日は朝がすごく早くて、朝5時半起きで、6時50分発とかでホテルを出て行かなくてはならなくて、朝ご飯をちゃんと食べる余裕がなかったんです。そのうえ、試合が始まると6試合ぶっ通しでやるので、昼休憩とかなくて、全試合が終わるまで、食事ができない環境でした。なので、結構、空腹の中で対戦していました。

――Day1では、Alpha7 Esports(A7)の調子が良く、トップを快走していましたが、その状況を見て、どう思い、どう対処していこうと思ったのでしょうか

SaRa選手:特に焦りとかはなかったですね。A7はブラジルのチームなので、さすがホームだなって思ったくらいです。

ReijiOcO選手:今日はA7が波に乗っているなぁって思っていました。

――かたや、Day2では2回のドン勝を取り、REJECTが一気にトップに躍り出ました。その状況でDay3はどのように迎えたのでしょうか

SaRa選手:まあ、行けるぞ!でしたね(笑)

Devine選手:世界大会では初めてのことだったので、緊張はありました。ただ、同時にワクワク感もありました。

Duelo選手:これまでの世界大会では、途中経過でも、瞬間的にでも1位になったことがなかったので、少し緊張しましたね。もともと世界大会に出場するときは緊張する方なんですが、今回は楽しめていたので、あまり緊張はしていなかったんです。でもDay3の開始前は緊張しましたね。試合が始まってしまえば、プレイすることに専念するので、緊張はとけていましたけど。まあ、楽しい大会でした。

ReijiOcO選手:正直、あまり覚えていないんですよね。Day3はいつも使っていた指サックを忘れてきてしまい、そのことで頭がいっぱいいっぱいで。それ以外のことに気が回りませんでした(笑)

SaRa選手:早く試合がしたいという気持ちでいっぱいでした。Day2が終わったあと、いろんなチームにおまえたちがチャンピオンだってもてはやされました。ただ、このもてはやされ方はちょっと危ういなって思って、気を引き締め直さないと、と思いました。こういう浮かれがちな時ってやらかすこと多いので、今日は冷静に行かなくてはという心持ちでしたね。

大会中は気負わず、楽しんでいる様子が配信されていました(写真提供:REJECT)

――Day3の1試合目でいきなり2位に3ポイント差まで詰め寄られてしまいましたが、その時はどんな感じだったのでしょうか

SaRa選手:あれは、サウンドトラブルがあって、イレギュラーな試合でした。運営に対応をしてもらうように交渉しているうちに試合になってしまいまして、まあ、事故みたいなものでした。それについてはあまり引っ張られずに次の試合からはすぐに切り替えられました。まあ、あそこで逆転まで行っていたらちょっと影響があったかも知れません。

――最後の試合も早めに落ちてしまい、他のチームの結果待ちとなりましたが、そのときの心境はいがかでしたか

Devine選手:緊張しながら待っていました。点数の差と状況を見るかぎりではたぶん大丈夫だろうと思いましたが、それでも可能性は残されていたので、やばいかなって部分もありました。

Duelo選手:勝てるとは思っていましたけど、2位がA7だったので、まくられてしまうかもとも思っていました。決着が付くまでお祈り状態でしたね。

ReijiOcO選手:A7以外のチームががんばってくれることを祈り、応援していました。

SaRa選手:勝てるとは思っていましたけど、完全には安心しきれなかったですね。あと、カメラが来ていたので、ここでお祈りポーズをしていたら絵になるかなって思って、お祈りをしていました(笑)

――結果的にランクポイントとエリミネートポイントの両方でトップを取れたのですが、唯一、ドン勝だけはA7の3回に及びませんでした。2~5試合目はずっと2位を獲得していたので、ドン勝が取り切れなかったことで影響はありましたか

Devine選手:(4回連続で2位を取れたのは)実際、運が良かった試合もありました。ただ、自分たちがしっかりと情報を取って、強気に行けた試合もありました。ドン勝を取り切れなかったことについては、そんなに気にしなかったですね。

SaRa選手:ポイントが同じになったら、ドン勝の多さで決着が付くので、気にならないことはなかったですが、ポイントを稼げていたので。

Duelo選手:ポイント的には稼げていましたが、連続してドン勝が取れない状況にもあったので、ちょっともったいないなとは思っていました。

――試合終了ごとにSaRa選手は他のチームに積極的に話をしにいっていましたがあれはどういった目的があったのでしょうか

SaRa選手:そうですね、友達と一緒に遊んでいて、試合終わったあとに、結果報告をしあっている感じでしたね。僕自身がこの大会を楽しもうって決めていたので、楽しめることはなんでもやった感じです。

――実際にどんな会話をしたのでしょうか。また、こういった光景は『PUBG MOBILE』の大会では良く見かけるのでしょうか

SaRa選手:いや、誰もやらないですね(笑)。会話としてはBOOM(ESPORTS)がドン勝を取ったあとに「おまえらは何キル取った?」みたいな話をしましたね。

――今回の優勝で日本チームの出場枠が増えましたが、このことについて、他の日本のチームから何か言われたりしましたか

SaRa選手:いや、日本枠が増えたことについては特になにもなかったですね。ただ、他のチームの選手から「感動した! 俺らも頑張る気になった」というメッセージはいただきました。

――これからPUBG MOBILE World Cup 2024やGlobal ChampionshipとPMGO以上に大きな世界大会が夏と冬に待ち構えていますが、意気込みをお聞かせください

Devine選手:まずは世界大会に出場するために日本の大会を勝ち抜いていく必要があるので、それを突破できるように頑張ります。これまでの大会と比較してもかなり大きな大会ですので、出場したいですね。今回は個人的にあまり良い仕事ができなかったので、次の大会では活躍できるようにしたいです。

Duelo選手:Devine選手が言ったように、まずは日本ですね。練習をして、その成果を大会で出して行きたいですね。世界大会でも良いパフォーマンスを出して行きたいです。

ReijiOcO選手:これからも自由にプレイしてパフォーマンスを出せたらと思います。

――高いパフォーマンスを出す為に強化するポイントはありますか

ReijiOcO選手:特にないですね。僕は十分に強いので(笑)。全体的なスキルアップですかね。

SaRa選手:世界を背負っているというような気負いを持たず、まず、自分自身が楽しめるようにプレイしていきたいです。それが結果的に日本の盛り上がりに繋がれば良いですね。あとは、世界大会に出て、友達をいっぱい作ります!

――ファンや運営などに要望がありますか

SaRa選手:えっと、メディア向けでも良いですか。

――もちろん

SaRa選手:世界一になったので、もっと取り上げて貰えるかと思っていました。盛り上がりも足りない感じがしました。もっと取材してください!

eスポーツワールドカップでは、より多くのメディアが報道することを切に願います(写真提供:REJECT)

――好成績を残した次の大会に注目が集まるので、次の大会ではもっと盛り上がると思います。最後にファンへ向けてひと言お願いします

MimoriNコーチ:長い間、REJECTを応援していただき、ありがとうございます。これまでの長い間、世界大会に出場はしてきましたが、惜しいところばかり見せてきました。それがようやくここに来て優勝ができ、報告できたのは感謝しかありません。優勝できたのは、もちろん選手の頑張りもありますが、ファンの皆様の支えがあってこそです。皆様の応援は選手の頑張りの後押しに繋がりますので、これからも応援よろしくお願いします。これからも国内リーグを勝ち抜き、eスポーツワールドカップに出場し、優勝を目指していきます!

Devine選手:いつも応援ありがとうございます。ファンのおかげで出せた成果だと思います。これから次の大会に向けて頑張っていきますので、引き続き応援よろしくお願いします。

Duelo選手:今回のPMGOで優勝できたことで、応援してくれたファンに恩返しができたのかと思います。さらに日本リーグ、ワールドカップに勝って、恩返しができればと思っています。

ReijiOcO選手:応援ありがとうございます! これから『PUBG MOBILE』の大会や我々の試合を観るのが楽しみだなと思っていただけるように頑張ります。

SaRa選手:まだREJECTがARGという名前の時から応援してくれた人、最近ファンになってくれた人、これまでずっと不甲斐ない結果を見せてきましたが、ようやくこういった結果が出せ、今までの恩返しができたかなと思います。今までの感謝とともに、今後の応援もよろしくお願いします。

――ありがとうございました。

『PUBG MOBILE』の競技シーンを支えてきたのは、NTTドコモのeスポーツブランドであるX-MOMENTであることは間違いありません。残念ながら、NTTドコモのeスポーツ事業は終了してしまいましたが、国内リーグを盛り上げた結果として、REJECTの世界一があったわけです。個人的には撤退が早すぎたという印象がありましたが、やはり成果を出すには短すぎる年数だったのでしょう。REJECTがシューティングゲームの公式大会で世界一になったことで、『PUBG MOBILE』の再燃の火は灯りました。あとは、日本のリーグを支える人たちが再び登場することを切に願います。なんなら、NTTドコモが再挑戦しても良いのではないでしょうか。

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Writer
岡安 学

eスポーツを精力的に取材するフリーライター。イベント取材を始め、法律問題、eスポーツマーケットなど、様々な切り口でeスポーツを取り上げる。ゲーム情報誌編集部を経て、フリーランスに。様々なゲーム誌に寄稿しながら、攻略本の執筆も行い、関わった書籍数は50冊以上。現在は、Webや雑誌、Mookなどで活動中。近著に『みんなが知りたかった最新eスポーツの教科書』(秀和システム刊)、『ゲーム業界のしくみと仕事がこれ1冊でしっかりわかる教科書』(技術評論社刊)。@digiyas

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